カイシンノステミ

毎月100冊以上の漫画&小説を読みながら発達障害でわちゃわちゃしています

「エレベーター」の最後一行に驚き過ぎずにもう一枚ページをめくってほしい【ネタバレ感想・ジェイソン・レナルズ】

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衝動買い大成功。

すでに読んだ人もこれからの人も、最後一行に驚き過ぎないでもう一枚ページをしっかりめくってください。

 

今回ご紹介するのはこちら!

ジェイソン・レナルズ「エレベーター」でございます!

最後にネタバレ感想を書いているので、未読の方はお気をつけください。

「エレベーター(LONG WAY DOWN)」あらすじ

Amazon エレベーター ジェイソン・レナルズ

15歳のウィルは射殺された兄のかたきを討つため、銃を持ってエレベーターに乗り込んだ。

自宅のある7階から地上に到着するまでの短い時間に彼が出会う人々とは……

ポエトリーとタイポグラフィを駆使する斬新な手法で文芸賞を席巻した注目作、ついに日本上陸!
引用:楽天ブックス 

多くの文学賞を受賞し、ベストブックリストに選出された「エレベーター」!

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原書が出版された直後からアメリカで大きな話題を呼びまくった今作「エレベーター」は、瞬く間に数々の文学賞を受賞し、多くのブックリストに選出されました。
(ブックリストっていうのは、権威や話題性の大きさでは文学賞ほどじゃないかもだけど『ブックリスト』という形で読者により多くの本について紹介・手引きする取り組み)

 

どんなものに受賞・選出されたかというと、ざっと書くだけでも

  • アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)YA部門受賞
  • ロサンゼルス・タイムズ文学賞YA部門受賞
  • ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞受賞
  • ペアレンツ・チョイス賞書籍部門金賞
  • プリンツ賞銀賞
  • ニューベリー賞銀賞
  • コレッタ・スコット・キング賞銀賞
  • 全米図書賞YA文学部門ロングリスト選出
  • バズフィード・ベストブック選出
  • 「エンターテインメント・ウィークリー」ベストYAブック選出

なんとこれだけの賞とブックリストに選手されているのです!


いや、ちょっと全然ピンとこないわ。って人。

わかりやすくいうと、アメリカの全米図書協会が行う本の天下一武道会で準決勝まで勝ち進んでると思ってください(全米図書賞YA文学部門ロングリスト選出)。

 

まぁ御託をうだうだ言ってもしょうがないので読んで貰えば一発なのですが、「エレベーター」はマジで面白いですよ。

本当読まないと損。マジで。

「エレベーター」に乗って降りるまでの『1分間』の濃厚すぎるストーリー

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「エレーベーター」のストーリーとしては、どこか『クリスマス・キャロル』に近いものがあり

「兄を殺された弟が復讐に行こうとして乗ったエレベーターに、次々と過去に関わったことがある人物が乗ってきてくっちゃべる」

というもの。

なんだけど、これエレベーターが7階から1階に降りるまでの「たった1分」のお話なんですよ。

 

この1分の間に様々な人物がエレベーター乗ってきて、主人公である弟・ウィルに話しかけていく様子がストーリーの大半を占めます。

 

実はこの作品、作者自身が友人が殺された時に仲間たちと集まって復讐を企てたことをベースに作られたらしく、ギャングの掟や思想、仕草がすっごい鮮明でリアル。

 

そして批評でも言われている「衝撃の最後の一行」。

このうたい文句自体がありふれてしまっていて「また衝撃の最後かよ!」と思うかもしれませんが、「エレベーター」はマジで鳥肌が立つんだって。

 

というのも、本としての魅せ方が普通の小説じゃないんですよ。

「エレベーター」は詩の形を使ってレイアウトで魅せる『体感型』の傑作

f:id:LMU:20190827190716j:plain作者のジェイソン・レナルズ氏は、学生時代の友人と自費出版した詩集がエージェントの目に留まったのがきっかけでデビューしたこともあり、今回の「エレベーター」は一度完成した小説を、友人のアドバイスを受けて「詩」の形態を使って書き直したそうです。

 

もうね、これが大成功です。

超絶面白い。

 

1ページに1つの詩が題をつけられながら繋がって語られていくのですが、これがまたレイアウトもトリッキーで凝っていて破壊力もすごいし、その上決して難解というわけじゃなく、視覚的にも文章的にもサラサラ入ってくる。

詩という形にちょっと足踏みしそうな人は、全くそんな心配はいらないので安心してください。

 

その魅せ方で最後の「一行」を『ガツン!』とカマしてくるんだから、これはもうものすごいですよ。

 

小説の新しい書き方というか、小説と詩の境目というか。

ページをめくる度に凝ったレイアウトでこちらの目を引き、詩的な文章で心の方に言葉を打ち込んでくる。

 

是非、興味を持った方は書店で置いている部数がめちゃくちゃ少ないと思う(私は書店を結局3件回ってしまった……)ので、今すぐ読みたい!じゃない限りはAmazonとかでさくっと購入しちゃうのがいいと思います。

 

いやマジでこれは超オススメです。

「エレベーター」の最後一行に驚き過ぎずにもう一枚ページをめくってほしい まとめ

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はい!というわけで今回は「エレベーター」をご紹介させていただきました!

詳しいネタバレ感想を書く前に、一度こちらでまとめてしまいましょう!

 

とにかく言いたいことはですね

詩と小説のゴチャッとしたこの感じはとにかく一度体感してほしい。

っていうのと

最後一行に驚き過ぎずにもう一枚ページをめくってほしい

ってことに限りますね!

 

ちなみに、作者のジェイソン・レナルズ氏はまだ36歳だそうですよ。

私も頑張るべ!

それでは!また!

ジェイソン・レナルズの「本当の最後の一言」

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まず、冒頭にある作者の言葉

全国各地の少年院にいる、
すべての少年少女に捧げる。
ぼくが会ったことのある子も、ない子も、
きみたちはみんな愛されている。

この言葉が「エレベーター」の本質で、作品中ずっと漂っている優しさの正体だと思う。

 

最後の「衝撃的な最後の一行」を読んだ時、正直、戸惑ってしまった。

この言葉をどう受け止めたらいいのか。

それまでの文脈から言葉の意味は「こっちの意味だよね?」って予想はつくものの、果たしてウィルがその後にとった行動は、どっちだったのか。

 

掟の「#1涙」ですら「たった一粒のみ。だから数に入らない」としてしまうような、お得意の「アナグラム」すら思い浮かばなくなってしまった彼。

拳銃を持ち出しケツに差し込んだものの、それを撃つことに関して心のどこかで誰かに頼ってしまいたい弱さを持つ彼が、この言葉をいったいどう受け止めたのか。

 

この時ほど「英語が理解できて原書で読めたらいいのに!」と思ったことはなかった。

けど、そんな気分は次のページをめくって吹っ飛んだ。

 

最後のページに書かれているモノが、この本の最後の答えだ。

 

わざわざ右ページを空白にしてまで作られた最後のページが「衝撃の最後の一行」と言われてる今作の、ジェイソン・レナルズの本当の「最後の一言」だと僕は思う。

 

最後のショーンの言葉にびっくりして読み飛ばしてしまった人は、もう一度最後のぺージをめくってみてほしい。

冒頭の言葉とおりの、優しい結末。

 

エレベーターは、立ち止まっていれば否応無しに扉は閉まる。

あとは、もう一度自分でどのボタンを押すか次第。

 

僕はこの本を、何かある度にめくって読むことになると思う。