カイシンノステミ

毎月100冊以上の漫画&小説を読みながら発達障害でわちゃわちゃしています

【常軌と狂気】むらさきのスカートの女がドチャクソ面白いからすぐ読んで【芥川賞候補作】※感想・ネタバレあり

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いやー!ジャケ買いしたらめちゃくちゃ面白すぎた。

こいつはマジで超おすすめです。

今回オススメするのはこちら!

芥川賞候補作!「むらさきのスカートの女」でございます!

「むらさきのスカートの女」あらすじ


楽天ブックス むらさきのスカートの女

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために〈わたし〉の職場で彼女が働きだすよう誘導する。
『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。
引用:Amazon 

あなたの街にも一人はいる「むらさきのスカートの女」

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あなたの街にも名物おじさん、もしくは名物おばさんの一人や二人はいたのではないだろうか?

ちなみ私の地元では、全身を真っ赤な"布"(決して服とは言い難い)で統一している、ホームレスの「真っ赤っかおじさん」

そして、腰まである髪の毛を"1束のドレッド"にまとめている(まとまってしまっている?)「ワンドレッドばばあ」という、二大スターがいる。

 

「むらさきのスカートの女」は、そんな"名物おばさん"と友達になりたくてしょうがない主人公が、あの手この手で「むらさきのスカートの女」にお近づきになっていくというお話だ。

 

いつもむらさきのスカートを履いた、パサパサした黒髪の、商店街でも町中でも知らない人はいない「むらさきのスカートの女」

そんな彼女と主人公の「わたし」は、友達になりたくて仕方がないのだ。

「わたし」がとてつもない労力を使ってお近づきになろうとしても、むらさきスカートの女のトリッキーな行動で次々と作戦は失敗していく。

この様子はホントに最高で、電車の中で読むと危険なくらい馬鹿馬鹿しい。

 

が、その笑いにゴマかされ、読み進めていくうちにいつの間にかに充満していた狂気が、「あっ」という間に私たちを襲い始める。

 

【ネタバレ小】”常軌”と”狂気”が入れ替わる「むらさきのスカートの女」【感想】

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あー!いい感じのドタバタ感だなぁー!

何て笑っていたのもつかの間、読み進めるたびに主人公である「わたし」に対しての違和感がふつふつと湧き上がる。

 

「わたし」の「むらさきスカートの女」に対する情報量が、尋常ではないのだ。

 

ある時は、むらさきスカートの女に接触を試みようとタックルをかまし(失敗)、またある時は無職の彼女のために、公園にある「むらさきのスカートの女の指定席」のベンチに「タウンワーク」を準備する。

この辺までだったら、ギリギリ「友達の友達の話」なら笑って聞ける範囲だ。

が、何と「わたし」はむらさきスカートの女が「何月から何月まで仕事をしていたか」、一年以上のデータベースを持っている。

 

これは「友達の友達の話」でも笑えない。

「友達やめなさい」とたしなめるレベルだ。

 

さらに、「わたし」の持ってる情報はこれだけじゃない。

むらさきスカートの女の「仕事をしている日々」・「無職の日々」のそれぞれの行動パターンや、どの会社に面接をしに行ったか、その合否までも全て把握しているのだ。

 

…………うん。

イッチバンヤベェの、こいつじゃね?

 

これに気づき始めた瞬間、「むらさきスカートの女」の物語は一気に反転する。

「むらさきのスカートの女」まとめ

f:id:LMU:20190707222424j:plainはい!というわけで、今日は「むらさきのスカートの女」をご紹介させていただきました!

ネタバレ大な感想を書く前に、気になった人はこの辺にして実際に読んだ方が楽しめると思うので、ちょっとこの辺でまとめてみます!

はっきりって事前情報なしのジャケ買いだったんだけど、ここまで面白いとは本当にラッキーでした。

芥川賞候補って書いてあったんだけど、芥川賞がどういう作品の傾向なのかも全然知らないので、先入観ゼロで読めたのは逆に嬉しかったな。

町中で「見世物」のように扱われているむらさきスカートの女が、公園で子供達と話すシーンは思わず電車内にもかかわらず泣いてしまった。いやーやられた。

ボリューム的にも、3時間かからないくらいで読み終えてしまう量なので「小説は読みたいけどなー!」って人にもオススメできるかなりの良作でした。

小説で何回も読み直すってなかなかないんだけど、これは読んじゃうなー。

気になった人はぜひ手に取ってみてくださいませ!

それでは!また!

【ネタバレ大】私たちが肩を叩かれる日はいつだ?【感想】

正直、「むらさきのスカートの女」は何も大きな事件が起こらない、「どこにでもありふれている」物語だ。

職場での不倫やいじめなんて正直どこにでもあるし、名物おばさんも実際に結構いる。

 

それがほんの少しの狂気だけでこんなにも面白くなるなんて、本当に驚き。

今村夏子氏の文章力はもちろん素晴らしいんだけど、そんな甘っちょろい話じゃない。

 

むらさきのスカートの女に対抗し、「黄色いカーディガンの女」を自称する主人公。

むらさきスカートの女に魅入り、彼女を始終を張り込み、その代償から家の家賃をばっくれるのをヨシとし、ネカフェに住み、彼女を自分の職場まで取り入れ観察する。

 

その「黄色いカーディガンの女」の"普通"に隠れる狂気性に魅入ってしまった私たちは、いったい「何の誰」なんだろう。

 

「黄色いカーディガンの女」は最後、見事に「黄色いカーディガンの女」へ格上げされた。

私たちが肩を叩かれるのは、いつなのだろう。